水がめ座すごろくの開発日誌

ゲーム製作のメモやその他あれこれ

説明書とそれを書く人の人間性など

 

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先日、ゲーム製作者のために、未発売のゲームの説明書を読んでくれるという企画があったので、書いたばかりの「ひらがな将棋」の説明書で参加してみた。

自分としては当初「ひらがな将棋」の説明書はごくシンプルに、必要最小限の内容を誤解のないように書けさえすればいいやとしか考えていなかった。

ところが、書き出してみて初めてその独特の難しさに気が付いたという、つまり自分は大変に低いレベルのド素人なのであった。

 

一応、当日まで少しずつ書いて、もう自分としては直すところがないと思える程度にまでは達したつもりでいた。

それでも第三者の目から見れば、思いがけない観点から欠点の指摘があったり、

「根本的にゲームとして成立していませんね」

というくらいの、ほぼ死刑宣告のような申し渡しがあったりするのではないかという不安が無くもなかった。

 

で、実際に読んでもらってあれこれと細かい指摘を受けたのだが、みな納得のいく指摘ばかりで、言われてみればその通り、その部分は書き直しますとしか言いようのない文が6~7箇所ほどあった。おかげで大分よくなった(と思う)。

 

いくつか例を挙げると、

 

1. 用語の統一

「駒を移動する」

「他の駒があるマスは通れない」

 と、ごく自然に書いていたのだが、「移動」と「通る」では表現として重なるので、どちらか片方に統一した方がよいという指摘があった。

これは自分だけでチェックしていたら百万年かかっても気が付かないような箇所で、もともと将棋のイメージがあるので普通にこれで分かるでしょう、と思い込んでいた。

 

2.できることと、できないこと

「サイコロの目で6が出たら6以下にはできないのか、必ず6マスの移動が必要なのか」

という疑問も出た。

実は、このゲームの前に作っていたサッカーのゲームでも似たような指摘を受けたことがあった。

つまり6が出たからといって6マス進む必要がない局面もあるので、強制的に「6」としてしまうと足踏み的なダブついた妙な動きが生じてしまうのである。まさか以前の欠点をまだ引きずっていたとは、予想外であった。

これは出た目の数「以内」とすればよいので、そのように書き直した。

 

3.「成る」に関する説明

駒を「成る」というのは将棋の世界では当然すぎて、あらためて説明する機会もないようなルールである。

しかしこのゲームの場合の「成る」とはひっくり返して別の文字にすることなので、将棋の方と似ている部分とそうでもない部分がある。

また「成る」領域も「相手陣内=自分から見て奥の方の三列」とは言葉で表現するといかにも回りくどい。

結局、成るゾーンを「色分けする」「分かりやすく点を打つ」「太い線を引いておく」などの代案も出してもらったので、とりあえず太い線を引くことにした。細かい表現も少し直した。

 

4.ゲームのマナーとかモラルとか

このゲームでは「文字駒の裏の文字が何であるか」という情報は、そこそこ重要な要素で、本当に本気の勝負であれば、おそらく暗記した方が有利になる筈だが、そこまでやる人もいないだろうし、おそらくやる必要もないと思われる。

とりあえず「絶対に見ては駄目」「禁止」とするとかえって不自然なので「いつでも(自分の駒も相手の駒も)めくって見て良い」としてある。 

ただ、そうしておくと今度は、

「何度も何度も、対局中に相手の駒をめくって見るプレイヤーが出てくるのではないか」

という指摘を受けた。

「そんな奴、いね~よ」

と一瞬思ったのだが、説明書を読んでくれた人の話によると、製作側の予想外の解釈が勝手に生まれて広がり、それが原因で「つまらない」「遊びたくない」とマイナス評価をされてしまうケースもあるという。

今回のような「何度もめくるのはアリかナシか」に関しては、モラルの問題だと思われるので、どこまで言及するかは微妙な判断になる。

「説明書には、作った側のメッセージが込められている」

という見方もあるとのことなので、大げさに言うと、書いた人の人間性や人格まで問われているのである。

確かに表面的なルール以外の、モラルに関する記述が含まれていれば、それは子供にとってはかなり強い印象を与えるのかもしれない、と自分が子供の頃のことまで思い出した。

一応、ここは製作者が出しゃばらない程度に文面を少し変えて対応しておいたのだが、どのように直したかは、購入した方のお楽しみということでここでは省く。

 

 5.勝つためのコツ

説明書の中に「勝つためのコツ」を少し書いておいた。

これは親切のつもりで、このブログにもかつて書いた、ごく初歩的な戦略のイロハを書いたのだが、

「何ができるかが分かっても、何をしていいのかが分からない人もいる」

「こういう説明が少しあると、とても助かる」

という考えもあれば、

「ゲームをしながら自分で発見していきたい」

という見方もあるので、こちらがどの程度まで書くべきかは判断しづらい。

私としては「コツ」をあらかじめ知っている人間が、初心者を思いっきり叩きのめすようにはなってほしくない。

しかし、そこまでは製作者側がコントロールしきれない、するべきでない問題でもあるので、やはり説明書ではごく一部にしか触れていない。

なるべく初心者対経験者、子供対大人の場合はハンデ戦を推奨する(たとえば子供は常にサイコロを振って出た目の数以内、大人は常に3マス以内しか移動できないなど)。

ちなみに戦術面で「壁」を作ることに関しては「そこまでは書かなくていいでしょう」とアドバイスされた(私も同感)。

 

他にも説明書全体のレイアウトの問題、例を多くするべき、などなど改善すべき点はあるのだが、何もかもは手を入れきれないので、もう少し整理しながら手直しを加えて調整したい。

 

新訂 徒然草 (岩波文庫)

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今回、説明書を読んでいただいたお二人は短い時間の中で親切にアドバイスしていただいて、実に有益であった。そのうちお一人は、以前にも一度お会いした方だったので、比較的話がしやすくて助かった。

やはりというか何というか、

「少しのことにも、先達はあらまほしき事なり」

なのであった。